
国家
解説で学ぶ

プラトン(紀元前428頃 – 紀元前348頃)
紀元前380年頃
プラトン『国家』は、西洋哲学の根幹をなす傑作です。正義とは何か、理想の国家はいかにあるべきかという永遠の問いを、ソクラテスの対話を通じて深く探求します。その思想は、現代社会を考える上でも示唆に富んでいます。
もしあなたが、姿を消せる魔法の指輪を手に入れたら、どうしますか?古代ギリシャの哲学者プラトンは、その著書『国家』の中で、「ギュゲスの指輪」という物語を通じ、この究極の問いを私たちに突きつけます。
物語の主人公は、リュディアの羊飼いギュゲス。ある日、嵐と地震で地面に大きな裂け目ができます[1854]。彼がその中に入ると、不思議な指輪を発見します。そして、その指輪をはめて偶然に細工の部分を内側に回すと、なんと彼の姿は誰にも見えなくなってしまったのです[184]。
ここから、プラトンの鋭い思考実験が始まります。もし、この魔法の指輪が二つあり、一つを正しい人に、もう一つを正しくない人に渡したとしましょう。二人の行動に、違いは生まれるでしょうか?[184]
『国家』が提示する結論は、衝撃的です。どんなに鉄の意志を持つ正しい人でも、決して正義を貫き通すことはできないだろう、と[1858]。誰にも見られず、罰せられる心配がなければ、市場から好きなものを盗み、他人の家に忍び込み、邪魔な人間を殺すことさえためらわない。まるで「神になったかのように」振る舞うはずだ、というのです[1858]。
この物語が私たちに突きつけるのは、人が正しくあるのは、そうせざるを得ないからに過ぎない、という厳しい現実です[1859]。つまり、人が正義を行うのは、罰や他人の目を恐れているからであって、正義そのものを心から愛しているからではない、というわけです。あなたはどう思いますか?