
ミドルマーチ
朗読で味わう

ジョージ・エリオット(1819 – 1880)
1872年
『ミドルマーチ』は、19世紀イギリスの地方都市を舞台に、多様な人々の人生と社会の変革を描き出す大作。女性の生き方、理想、そして人間関係が織りなす物語は、時代を超えて私たちに深い洞察と感動を与えます。
ミドルマーチという、時の流れも緩やかな田舎町に、ドロシア・ブルックという若い女性がいました。流行のドレスやうわべばかりの社交には少しも心が動かず、その胸には、もっと壮大で、意味のある人生を送りたいという、燃えるような理想が宿っていたのです[5]。それは「魂の飢え」とでも言うべきものでした[36]。
眉目秀麗なチェッタム卿が熱心に求婚しても、彼女は穏やかに退けます。ドロシアが結婚に求めていたのは、愛情や財産ではありません。それは、自分を知的な高みへと導いてくれる師との結びつき。望むならヘブライ語さえ教えてくれるような、父親にも似た導き手との結婚でした[9]。
そんな彼女の目に留まったのが、乾いた物腰の中年の学者、エドワード・カソーボン師です。周囲が「まるでミイラじゃないか」と囁き、妹がその地味な見た目に眉をひそめても、ドロシアの目には、彼が偉大な真理を探求する聖者のように映っていました。
やがて、カソーボン師からの、事務的とさえ言えるよそよそしいプロポーズ。そこに情熱的な言葉はありません。 「おお、ミス・ブルック――ドロシア! これは、私の人生にこれほどの幸福が残されていたとは、想像もできませんでした[60]」 その言葉を、彼女は厳粛な気持ちで受け入れます。それは、自分を『最も壮大な道』へと導いてくれる師への、自ら選んだ献身のはじまりだったのです。