
荘子
解説で学ぶ

荘子(紀元前369頃 – 紀元前286頃)
紀元前330年頃
『荘子』は、道家の思想を寓話と対話で説く古代中国の古典。既存の価値観を超え、世界の広大さと知識の相対性を深く洞察します。世俗のしがらみから解き放たれ、自由に生きるための知恵と洞察を与えてくれるでしょう。
あるところに、誰もが見上げるような巨大な木がありました。しかしその幹はこぶだらけで、枝はひどくねじ曲がり、家具にも柱にもなりません。ある職人は言いました。「何の役にも立たない質の悪い木だ。だからこそ、これほどの樹齢を保てたのだ」と[334]。そう、この木は、何かの役に立つという価値がないからこそ、斧で切り倒される心配もなかったのです[179]。思想家・荘子は、この木が「役に立たないおかげで、天から与えられた寿命を全うできたのだ」と喝破しました[1084]。
では、「役に立たない」ことは、常に私たちを守ってくれるのでしょうか。ここに、まったく逆の話があります。ある家に、鳴くのが上手なガチョウと、まったく鳴かないガチョウがいました。家の主人は、夕食のために一羽をしめることにし、鳴かない「役に立たない」方を選びました。役に立たないから、殺されてしまったのです。
これには荘子の弟子も混乱します。「昨日は、山の木が役に立たないから長生きできると聞きました。なのに今日は、この家のガチョウが役に立たないから殺される。一体、私たちはどちらの立場をとればいいのですか?」[1085]。
すると荘子は、微笑んでこう答えます。「私は、その二つの中間に身を置くことにしている」と[1086]。役に立つと判断されれば利用され、役に立たないと見なされれば捨てられる。どちらか一方に偏っていては、世間の評価から逃れられません。本当の自由とは、そうした人間の作った価値基準を超えて、万物自然の流れである「道(タオ)」に身を委ねることで得られるのだと、荘子は示唆したのです[1086]。