
共産党宣言
解説で学ぶ

カール・マルクス / フリードリヒ・エンゲルス(1818 – 1883)
1848年
人類の歴史を階級闘争として捉え、資本主義社会の矛盾とプロレタリアート革命の必然性を説く。その思想は世界中の社会運動に計り知れない影響を与え、今なお議論を呼ぶ古典である。
権力者たちの背筋を凍らせる、不気味な気配。これが、かの有名な『共産党宣言』の冒頭です。「一つの亡霊がヨーロッパを徘徊している――共産主義という亡霊が」。[1]この一文は、論理的な説明から入るのではなく、聴く人をいきなり、得体の知れない脅威が世界を覆い尽くさんとする、ドラマチックな世界へと引きずり込みます。ローマ教皇からロシアの皇帝まで、あらゆる権力者がこの亡霊に怯えている。[2]まるでゴシック小説のような幕開けです。
しかし、これは単なる文学的な演出ではありませんでした。19世紀半ばの政治状況を、ありのままに映し出していたのです。当時、「共産主義」という言葉は、すでに権力者たちにとって便利な武器として使われていました。自分たちの支配に逆らう者がいれば、相手が誰であろうと「あいつはコミュニストだ」とレッテルを貼り、社会から葬り去ろうとしたのです。この言葉は、政府が反対派を攻撃するだけでなく、反対派どうしが互いを貶めるためにも使われるほど、強い否定的な力を持っていました。
そこで著者であるマルクスとエンゲルスは、あることに気づきます。敵であるヨーロッパ中の権力者たちが、こぞって「共産主義」を一つの「力」として認めているではないか、と。[3]ならば今こそ、共産主義者が自ら名乗り出て、自分たちの本当の考え、目的、そして目指す未来を、全世界に向けて公然と宣言すべき時だ、と考えたのです。[4]だからこそ、この宣言は書かれました。得体の知れない恐ろしい亡霊という「おとぎ話」を、自分たちの手による明確なマニフェストに置き換えるために。敵が恐怖心から作り上げた虚像ではなく、その素顔を、堂々と世界に示すために。[4]