
人間本性論
解説で学ぶ

デイヴィッド・ヒューム(1711 – 1776)
1739年
『人間本性論』は、人間の理性、感情、道徳の根源を徹底的に探求したヒュームの主著です。その徹底した経験論は、後の哲学に計り知れない影響を与え、現代にまで続く思索の源泉となっています。
私たちは、人生の大きな決断を、冷静に、論理的に下していると思っていますよね。事実を分析し、メリットとデメリットを天秤にかけて、最も賢い道を選んでいる、と。でも、もしその深く信じている常識が、壮大な勘違いだったとしたらどうでしょう。もし、私たちの誇る理性が、実は何かを動かす力を全く持っておらず、ただ感情の言いなりになることしかできないとしたら?[2094]
これは、哲学者デイヴィッド・ヒュームが主著『人間本性論』で突きつけた、衝撃的な問いです。彼によれば、私たちが世界を理解する上で最も基本的な信念、たとえば「原因」と「結果」のつながりですら、論理的な思考の産物ではありません。それはむしろ、深く根付いた感情や心の「習慣」から生まれているのです。[968]
たとえば、「ある原因が、必ず特定の結果を生む」という確信、つまり「必然性」。この確信は、世界の物事そのものに宿っているわけではないとヒュームは言います。それは私たちの心の中にある印象、つまり、ある考えから別の考えへと連想が働く心の決まりに過ぎないのです。[883][885]
つまり、私たちの知的な世界の土台を支えているのは、がっしりとした論理ではなく、驚くべきことに、もっと感覚的なものだということです。このヒュームの指摘は、私たち自身のあり方を根底から見つめ直させる、強烈な一撃と言えるでしょう。