
哲学の諸問題
解説で学ぶ

バートランド・ラッセル(1872 – 1970)
1912年
『哲学の諸問題』は、知識や実在に関する根源的な問いを平易に解き明かす。複雑な概念を明快な筆致で提示し、哲学の世界への深い洞察を促す。時代を超えて多くの読者を魅了し続ける、示唆に富む一冊です。
今、あなたの周りにあるテーブルを思い浮かべてみてください。そこには本や書類が置かれているかもしれません[6]。当たり前すぎて、疑うことさえしない光景ですよね。でも、哲学は、まさにこの「当たり前」から始まります。私たちが確信しているこの世界は、本当に真実なのでしょうか[7]。
テーブルをよく観察してみましょう。テーブル全体は同じ色のはずなのに、光の当たる部分は明るく、時には白く見えますよね[9]。また、見る角度を変えれば、長方形のテーブルの角は鋭角や鈍角に見えるはずです[16]。これは、物事の「見た目」と「本当の姿」が違う、という哲学の最も厄介な問題の始まりです[10]。
手で触れたときの硬さも同じです。押す強さや体のどの部分で触れるかによって、感覚は変わります。つまり、感覚はテーブルの決まった性質を直接教えてくれるのではなく、その奥にある何かの性質を知らせる「サイン」に過ぎないのです[18]。こうして、「本当のテーブル」というものがあるとしても、それは私たちが五感で直接体験するものとは違う、ということがわかってきます[19]。哲学では、私たちが直接感じる色や硬さといった感覚情報を「センスデータ」と呼びます[21]。
この気づきは、私たちを二つの根源的な問いへと導きます。第一に、そもそもセンスデータの向こう側に「本当のテーブル」は存在するのか? 第二に、もし存在するなら、それは一体どんなものなのか?[20] これは突き詰めると、「物質というものは存在するのか?」「もし存在するなら、その本性とは何か?」という、壮大な問いに繋がっていくのです[25]。