
饗宴
解説で学ぶ

プラトン(紀元前428頃 – 紀元前348頃)
紀元前380年頃
プラトンの『饗宴』は、古代アテナイの宴で繰り広げられる、愛の本質を巡る対話です。ソクラテスらが語る様々な愛の形は、現代に生きる私たちにも深く響くでしょう。
「この人こそ、自分の失われた片割れだ」と直感したことはありませんか。まるで、自分の一部が欠けていることに気づいていなかったのに、その人と出会って初めて完全になれたような、不思議な感覚です。この、誰しもが経験するかもしれない強烈な引力の正体を、古代ギリシャの哲学者プラトンが、実に鮮やかな物語で解き明かしています。
彼の著書『饗宴』によれば、大昔の人間は今とは全く違う姿をしていました。男、女、そしてその両方の性質を持つ「男女両性」という三つの性別があり、それぞれが球体で、手足は四本ずつ、丸い首には二つの顔がついていたというのです[30]。彼らはとてつもなく強力で傲慢になり、ついには神々に戦いを挑みました。そこで大神ゼウスは、彼らの力を削ぐための妙案を思いつきます。「そうだ、彼らを真っ二つに切り裂いてしまおう。そうすれば力は半分になり、我々への供物は倍になるだろう」と[32]。
この神による分裂こそが、私たちが「愛」と呼ぶ感情の起源だと、物語は語ります。つまり、私たちが誰かを強く求め、一つになりたいと願うのは、このときに引き裂かれたもう一方の「自分のかたわれ」を探し求める、魂の根源的な叫びなのです。愛とは、もともと一つだった全体の状態に戻りたいという欲望であり、その全体を追い求めること、それこそが「愛」と呼ばれるのです[35][305]。そう考えると、私たちが感じるロマンティックな憧れは、はるか昔、神々によって引き裂かれた壮大な宇宙の記憶が、今も響いているのかもしれませんね。