
アンクル・トムの小屋
朗読で味わう

ハリエット・ビーチャー・ストウ(1811 – 1896)
1852年
アンクル・トムの小屋は、19世紀アメリカの奴隷制度の過酷な現実を描き、廃止運動に大きな影響を与えました。トムの崇高な精神と、自由を求める人々の物語は、現代にも深い問いかけを投げかけます。
ケンタッキーのある屋敷の応接間。グラスが触れ合う上品な音とは裏腹に、重苦しい空気が漂っています。紳士的な農場主シェルビー氏の向かいに座るのは、ずんぐりとした体つきの奴隷商人ヘイリー[1]。その卑しい顔つきとふんぞり返った態度は、彼の仕事を物語っていました[1]。借金の返済をめぐる密やかな話し合いの中で、ヘイリーは言い放ちます。「黒人にとって信心はたいした値打ちもんですよ。本物なら、ですがね」[2]。シェルビー氏は、誠実なトムを手放すことをためらいますが[3]、ヘイリーは「商売人が持てるだけの良心」しか持ち合わせていないと、さらに要求を重ねます[4]。
そこへドアが開き、4つか5つほどの男の子、ハリーが入ってきます。絹糸のような黒髪が愛らしい顔を縁取る、思わず目を奪われるほど美しい子どもでした[5]。その子の姿に、ヘイリーの目が釘付けになります。「そいつを付け加えてくれるなら、話はまとめる」[6]。財政難に追い詰められたシェルビー氏は、苦悩の末、トムと幼いハリーの両方を売ることに同意してしまうのです[10][11]。ヘイリーはこうも言いました。「黒人なんてものは、家族と一緒にいられるなんて期待は持たないもんです」[9]。
ドアの近くにいたハリーの母エライザは、その会話を耳にしてしまいます。心臓が大きく脈打ち、彼女は思わず我が子を、息が詰まるほど強く抱きしめました[12]。その夜、奥様の部屋の外に隠れた彼女は、絶望的な事実を知ります。息子ハリーとトムおじさんが売られ、夜明けには連れていかれる、と[45]。彼女の瞳から涙はこぼれません。ただ、血の滴るような静かな決意が固まっていきました[18]。走り書きの手紙を残し、彼女は行動を起こすのです。「息子を救うために、行きます。どうか、お許しください」[19]。