
オイディプス王
朗読で味わう

ソポクレス(紀元前496頃 – 紀元前406頃)
紀元前429年頃
オイディプス王は、自らの運命に翻弄されながら真実を追い求める王の姿を描くギリシア悲劇の傑作です。その荘厳な物語は、人間の宿命と選択について深く問いかけ、時代を超えて読み継がれています。
息もできぬほどの疫病が、古き都テーバイを覆い尽くしていました。王宮の階段には、老いも若きも、嘆きを抱えた人々が身を寄せています。その手には、祈りを込めたオリーブの枝が握りしめられ[7]、あたりには祈りの香と、神々にすがる声が、重く立ち込めていました[8]。彼らの望みはただ一人、王オイディプス。かつて、あの恐ろしいスフィンクスの謎を解き、この都を救った偉大なる英雄です[10]。神官が、震える声で惨状を訴えます。「我らの船は嵐に打ち砕かれ、死の波間に沈みかけております。大地は実りを忘れ、家畜は病み、女たちは子を産むことなく、ただ命を落としていくのです[9]」。民の苦しみを一身に背負う王は、静かに答えます。すでに手を打ったと。義理の弟クレオンを、はるかデルポイの神託所へと遣わしたのだ、と[11]。やがて戻ったクレオンがもたらした神託は、あまりにも過酷なものでした。この災いは、先王ライオス殺害の穢れが、罰せられぬままこの地に留まっていることへの、神罰だというのです[12]。都を救う道は、ただひとつ。その犯人を見つけ出し、国から永久に追放するか、さもなくば、その血をもって償わせること[13]。