
トリストラム・シャンディ物語
朗読で味わう

ローレンス・スターン(1713 – 1768)
1759年
『トリストラム・シャンディ物語』は、当時の小説の常識を覆した画期的な作品です。予測不能な物語展開とユーモアあふれる筆致で、人生の奥深さを巧みに描き出します。今なお色褪せないその魅力をご堪能ください。
物語の主人公、トリストラム・シャンディの嘆きは、彼がこの世に生を受ける、その瞬間にまで遡ります。「ああ、父上か母上、いっそお二人とも、あの時もう少しだけ、ご自分たちが何をしているのか気にかけてくださればよかったのに」[1]。
運命の夜、母エリザベスは、父ウォルターの営みをふと遮り、こう尋ねたのです。「ねえあなた、時計のネジを巻くのを、お忘れではありませんこと?」[2]。
父は声を抑えながらも、天を仰ぎました。「ああ、神よ!天地創造このかた、これほど馬鹿げた問いで男を邪魔した女がいただろうか!」[2]。
父に言わせれば、母のその「場違いな問い」[3]こそが、すべてを台無しにした元凶でした。その一言で繊細な「動物精気」は散り散りになり、胎児…すなわち「ホムンクルス」を正しく形作る役目を果たせなくなった、と[3]。このホムンクルスこそ、いかに滑稽に見えようとも、科学の目には尊厳ある生命として映る、守られるべき存在なのです[4]。
そう、トリストラムの不運は、彼が生まれる九ヶ月も前から始まっていたのです[5]。この一件以来、シャンディ家の奇妙な歯車は回り始めます。難解な理論に執着する父。そして、時計のネジを巻く音を聞くたび、別のことを考えてしまう母[7]。
こうして私、トリストラム・シャンディは、このろくでもない悲惨な世界に生み出されたのです[8]。彼の人生におけるすべての災厄は、この最初のつまずきから始まったのだと、彼は固く信じているのでした。