
自省録
解説で学ぶ

マルクス・アウレリウス(121 – 180)
175年頃
マルクス・アウレリウスの『自省録』。ストア哲学で自己と倫理、心の平静を探求したローマ皇帝の内省録です。現代に生きる私たちへ、時代を超えた確かな指針を与えます。
次から次へと押し寄せる情報や、予期せぬ出来事に、心が疲れてしまうことはありませんか。実は、この感覚と格闘した人物が、およそ二千年前のローマにもいました。それも、当時の世界で最も力を持っていた皇帝、マルクス・アウレリウスです。
彼の人生は、決して平穏なものではありませんでした。皇帝になるやいなや、国境のいたるところで戦争が勃発し[13]、国内では疫病と飢饉が猛威をふるいました[15]。さらには、信頼していた将軍が帝位を奪おうと反乱を起こすという、壮絶な裏切りにも見舞われます[19]。
これほどの嵐のまっただ中で、彼は驚くべき結論に達します。私たちを苦しめるのは、出来事そのものではない、ということです。彼はこう書き残しました。「もし外部の何かが君を苦しめるなら、その原因はそれ自体ではなく、それに対する君自身の思い込みなのだ。そしてそれは、君が望む時にいつでも手放すことができる」[717]。
つまり問題なのは、私たちの「ものの見方」だというのです。「すべては意見にすぎない。そして意見は君の心次第だ。その意見を取り去ってしまえば、まるで船が嵐を避けて港に入るように、心はたちまち凪ぎ、すべては穏やかになる」[1034]。
自分の心の港は、いつでも自分で守ることができる。これが、人類史上最も力を持った人物の一人が、人生の嵐の中から見つけ出した、究極の知恵なのです。