
フォースタス博士の悲劇
朗読で味わう

クリストファー・マーロウ(1564 – 1593)
1604年
限りない知識と権力への渇望が招く悲劇を描いた、マーロウ不朽の傑作。悪魔と契約した学者の運命を通して、人間の欲望の深淵と魂の選択を問う、エリザベス朝演劇の金字塔です。時代を超えて心を揺さぶる、人間の本質を抉る物語。
ヴィッテンベルクの静かな書斎。ファウストゥス博士は、尽きることのない知的好奇心を抱え、落ち着かぬ足取りで部屋を歩き回っています。彼は書物を次々と手に取っては、投げ出すように机へ置きました。
論理学は、巧みに論じる術にすぎず[4]、それ以上の奇跡は起こせない[4]。医学は人を救えても、不死をもたらすことはできない。法学は、取るに足らない遺産を扱うばかり。そして、かつては彼の全てであった神学でさえ、今は空虚に響きます。聖書はこう告げるのです。「罪の報いは死。なんとも厳しい言葉だ」[5]。そして「もし我らに罪がないと言うなら、我らは自らを欺いている」[5]。ならば、人は罪を犯し、その結果として死ぬしかないではないか。永遠の死を。これを何の教えと呼ぶのか。なるようになる、ただそれだけか。神学よ、さらばだ[6]。
彼の視線は、禁断の書物へと注がれます。魔術師たちの形而上学、黒魔術の書[7]。そこにこそ、彼が求める全てがあるように思えました。優れた魔術師は、全能の神に等しい。さあファウストゥス、この頭脳を使い、神の座を掴み取るのだ[8]。
その時、どこからか声がします。 「おお、ファウストゥス、その呪われた書物を捨てなさい」[9] しかし、すぐにもう一つの声が囁きかけました。 「進め、ファウストゥス。天における神のごとく、地上の王となるのだ」[10]
無限の力という甘美な響きに心を奪われ、彼は警告を振り払います。そして、固い決意を胸に、こう呟くのでした。
「今宵、儀式を行う。たとえ、この身が滅びようとも」[14]