
オズの魔法使い
朗読で味わう

ライマン・フランク・バウム(1856 – 1919)
1900年
ドロシーと仲間たちが繰り広げる、エメラルドの都への冒険。勇気と知恵、そして思いやりを探す旅は、真の願いがすでに自分の中にあることを教えてくれます。世代を超えて愛される、心温まる名作です。
ドロシーは、カンザスの広くて灰色の大草原に、ヘンリーおじさんとエムおばさん、そして子犬のトトと暮らしていました。[4]周りは何もかもが灰色でした。太陽が照りつけて、大地は乾ききった灰色のかたまりのよう。家も、周りの景色と同じく、くすんだ灰色でした。[6]
ヘンリーおじさんとエムおばさんも、まるで灰色の一部のようでした。太陽と風にさらされた顔にはしわが刻まれ、二人が笑うことはありませんでした。[7]そんなドロシーを笑わせてくれたのは、黒い子犬のトトだけ。トトがいなければ、ドロシーも周りの景色と同じように、灰色になってしまっていたかもしれません。[9]
ある日のこと、巨大な竜巻がやってきました。[10][11]ドロシーが地下室に逃げ込むより先に、家は嵐の中心に巻き込まれてしまいました。[12][13]家はぐるぐると二、三度渦を巻くと、ゆっくりと空に浮かび上がり、ドロシーとトトを乗せたまま、どこか遠くへ運ばれていきました。[14][15]
やがて家がガタンと大きな音を立てて着地したとき、そこは美しく色とりどりのマンチキンたちの国でした。[18][19][20]不思議な偶然で、ドロシーの家は、東の悪い魔女の真上に落ちてしまったのです。[23]魔女は家の下敷きになって死んでしまい、マンチキンたちは、魔女のひどい支配から解放されました。[25][27]
そこへ北の良い魔女がやってきて、ドロシーにお礼を言いました。[21][28]そして、亡くなった魔女が履いていた銀の靴をドロシーにくれたのです。[33][34]その靴には、まだ誰も知らない、強力な魔法が秘められていました。[35]「おじさんとおばさんのところに帰りたいんです」とドロシーは言いました。「きっと心配しているわ。どうすれば帰れるか、教えてくれませんか?」[36]
しかし、マンチキンたちも良い魔女も、首を横に振るばかりでした。オズの国は、誰も越えることのできない、広大な砂漠に囲まれていると言うのです。「残念だけど、お嬢さん」と良い魔女は悲しそうに言いました。「私たちと一緒にここで暮らすしかないようですね」。[37]その言葉を聞いて、ドロシーは見知らぬ人たちの中で、たまらなく心細くなり、声をあげて泣き出してしまいました。その涙は心優しいマンチキンたちを悲しませたようで、彼らも一緒になってしくしくと泣き始めました。
しばらく考えていた良い魔女は、魔法の石板を取り出しました。石板には「ドロシーをエメラルドの都へ行かせよ」という言葉が浮かび上がりました。[38]「それなら、エメラルドの都へ行くしかありません」と、魔女は泣いているドロシーに言いました。[28]「偉大なオズなら、助けてくれるかもしれません」。[32][39]良い魔女は続けます。「エメラルドの都へ続く道は、黄色いレンガでできています。だから、道に迷うことはありませんよ」。[43]
旅のお守りとして、良い魔女はドロシーの額にキスをしました。そのキスは、どんな危険からもドロシーを守ってくれる印となりました。[42]こうして、ドロシーは黄色いレンガの道を歩き始めました。[49]太陽は明るく輝き、鳥たちは楽しそうにさえずっています。突然知らない国へ飛ばされてきたのですから、さぞかし心細いだろうと思いきや、ドロシーの心は、それほど沈んではいませんでした。[50]
灰色の世界をあとにして、ドロシーが踏み出したその一歩は、新しい冒険への一歩ではありませんでした。それは、失ってしまった自分の家へと続く、長くて曲がりくねった道をたどる、最初の一歩だったのです。