
自由論
解説で学ぶ

ジョン・スチュアート・ミル(1806 – 1873)
1859年
ミルの『自由論』は、個人の自由と社会の調和を深く探求した政治思想の金字塔。他者に危害を与えない限り、自由は尊重されるべきという原則は、現代社会の根幹をなす。
SNSで何かを書き込むとき、「これを言ったらどう思われるだろう」と、ふとためらうことはありませんか。まるで常に誰かの目にさらされているような、この息苦しさ。実は150年以上も前に、哲学者のジョン・スチュアート・ミルが、その正体を驚くほど正確に予言していました。
彼は名著『自由論』の中で、本当に恐ろしいのは政府による権力的な弾圧だけではない、と指摘します。もっと根深く、手ごわいのは、社会が生み出す「同調圧力」だというのです。ミルによれば、この社会がふるう「見えない専制」は、政治的な抑圧よりもはるかに厄介です。なぜなら、そこから逃れる術はほとんどなく、私たちの生活の隅々にまで深く浸透して、魂そのものを奴隷にしてしまうからです[92]。
だからこそ、権力者の圧政から身を守るだけでは不十分であり、「多数派の意見や感情という名の圧政」からも自分を守る必要がある、とミルは訴えました[93]。この社会の圧力は、法的な罰則を使うことなく、自分たちの考えややり方を、それに従わない人々に「行動のルール」として押し付けます。そして、自分たちの型に合わない個性が育つのを妨げ、全員を同じ鋳型にはめ込もうとするのです[93]。
このミルの言葉は、現代を生きる私たちにこそ、重く響きます。今日の社会はまさに、上の階級から下の階級まで、誰もが「敵意に満ちた、恐ろしい検閲の目」のもとで暮らしているかのようです[453]。ミルの警告は、単なる歴史上の思想ではありません。私たちの自由が今、何に脅かされているのかを教えてくれる、生きた言葉なのです。