
種の起源
解説で学ぶ

チャールズ・ダーウィン(1809 – 1882)
1859年
『種の起源』は、自然選択による進化という画期的な理論で、生命の多様性に関する認識を根底から覆しました。ダーウィンの綿密な研究と探求が、現代生物学の礎を築き、科学と思想に計り知れない影響を与えた不朽の名著です。
科学の歴史を塗り替えた名著、『種の起源』。その最後のページは、難解な理論の要約ではなく、驚くほど詩的な文章で締めくくられています。ダーウィンは私たちに、ありふれた土手を心に思い浮かべてみてほしい、と語りかけます。そこには、様々な種類の植物が茂り、鳥は歌い、昆虫が飛び交い、湿った土の中をミミズが這っている。[2051] これら精巧に作られた生き物たちは、姿かたちも全く違いながら、複雑に絡み合い、互いに依存しあって生きています。
そして、ここからがダーウィンの真骨頂です。彼は、この驚くべき生命の多様性と相互依存は、何万もの個別の創造行為の結果などではなく、私たちの周りで常に作用している、ごく僅かな自然法則が生み出したものなのだ、と喝破するのです。ここに、ダーウィンの思考の中心にある、強烈な逆説が姿を現します。つまり、自然界に満ちる容赦ない「闘争」、そして飢えや死といった過酷な現実からこそ、私たちが考えうる限り最も崇高なもの、すなわち高等な動物たちが生み出される、というのです。[2052]
たった一つの、あるいはごく少数の単純な生命から始まり、地球が引力の法則に従って回り続ける悠久の時の中で、数えきれないほど美しく、また驚くべき生命の形が生まれ、今この瞬間も生まれ続けている。この生命観には、壮大な趣があるではないか、とダーウィンは結びます。[2053]