
海底二万里
朗読で味わう

ジュール・ヴェルヌ(1828 – 1905)
1870年
『海底二万里』は、ネモ船長と潜水艦ノーチラス号が織りなす壮大な海洋冒険物語です。科学の驚異と深海の神秘を描き、人間と自然の対話、そして自由への問いを投げかけます。時代を超えて読み継がれるSF冒険文学の金字塔です。
1866年、世界中の海で、船乗りたちの間に不気味な噂が広まります。[1] 時に青白い光を放つ、巨大な紡錘形の「なにか」。どんなクジラよりも大きく、そして速い。[2] 事実、ある船の分厚い船体には、まるで巨大な刃物で貫かれたかのような、きれいな三角形の穴が開けられていたのです。[4]
高名な海洋学者アロナクス教授は、その正体を「途方もない力を持つ、巨大なイッカク」だと発表しました。[6] 海という神秘のベールは、人々の想像力をどこまでもかき立てます。[7][24] やがて教授のもとに、この怪物を追うアメリカの軍艦エイブラハム・リンカーン号への招待状が届くのでした。[8]
教授は、忠実な助手のコンセイユを伴って船に乗り込みます。[9][10] そこには、世界一の腕を持つ銛打ち、ネッド・ランドもいました。[12] しかし彼は、そんな生物がいるなどとは、はなから信じていません。[13]
太平洋をめぐる長い探索の末、乗組員たちの高揚が疲労に変わったころ、[16] ついにネッドがその姿を捉えます。[17] 怪物は、周囲の海を隅々まで照らし出すほど、強く不可思議な光を放っていました。[18] 軍艦は追跡しますが、大砲の弾もまるで戯れのようにかわされてしまいます。[20]
夜、ネッドが放った銛が命中した瞬間、響いたのは肉を裂く音ではなく、硬い金属音でした。直後、怪物の光が消え、巨大な水柱が甲板を洗い、教授は荒れ狂う海へと投げ出されます。[21] 闇と冷たい波にのまれそうになったその時、彼を救ったのは、主人を追って海に飛び込んだコンセイユでした。[22] やがて二人は、海に浮かぶ「島」にしがみつくネッドを発見します。教授がその表面に手を触れた、その時。ネッドが言いました。
「教授、こいつは…鋼鉄でできてますぜ」[23]
そう、世界を震撼させた怪物の正体は、人間が作り出したものだったのです。[24]