
鏡の国のアリス
朗読で味わう

ルイス・キャロル(1832 – 1898)
1871年
アリスが鏡の国に迷い込み、論理が逆転した世界で冒険。赤の女王やハンプティ・ダンプティとの出会いを通して、言葉遊びと哲学的な深みが楽しめます。時代を超え愛される不朽の名作です。
しんしんと雪が降り積もり、あたりを静寂が包む午後。暖炉のそばの心地よい肘掛け椅子で、アリスは、毛糸玉をめちゃくちゃにしてしまった黒い子猫を、優しくたしなめていました。ふと、その視線が暖炉の上にかけられた大きな鏡に向けられます。何もかもが左右あべこべに映る、もうひとつの部屋。鏡の国のミルクって、どんな味がするのかしら。そんな楽しい空想に心をときめかせながら、アリスは子猫にささやきました。「ねえ、あなたを鏡のおうちに入れてあげましょうか。どうかしら?」[3] そして、まるで固いガラスが柔らかなガーゼになったかのように想像しながら、そっと鏡に手を伸ばします。すると、どうでしょう。信じられないことに、鏡の表面が、まるで輝く銀色の霧のように、ゆらりと溶け始めたのです。驚きに目を見開く間もなく、アリスの体はすうっと鏡を通り抜け、ふわりと鏡の向こうの部屋に、軽やかに降り立ちました。[4] そこは、床も、丘も、さらさらと流れる小川も、すべてが巨大なチェス盤でできた不思議な国でした。そしてアリス自身は、これからゲームを始める小さな白いポーン。たった11手で勝利をおさめなくてはならない、という役割を与えられたのです。[1] 愛するあなたへ贈られる、おとぎ話の贈り物のように、[2] アリスの奇妙で素敵な冒険が、いま、静かに幕を開けます。