
Moby Dick; Or, The Whale
Listen as Narration

Herman Melville(1819 – 1891)
1851年
Herman Melville's "Moby Dick" stands as a monumental work of American literature, chronicling Captain Ahab's relentless, vengeful pursuit of the elusive white whale. This epic tale transcends a mere adventure story, delving deep into profound philosophical questions about man's struggle against nature, the destructive nature of obsession, and the complex interplay of fate and free will. Its powerful narrative and rich symbolism continue to captivate readers, making it a timeless exploration of the human condition.
わたしのことは、イシュマエルと呼んでください[4]。 どうしようもなく気分が滅入り、魂に、冷たい霧雨の降る11月が訪れたような気持ちになるとき[5]、わたしは決まって、海へ向かうのです。それが、わたしなりの、憂鬱を振り払うための唯一の方法なのです。思索と水は、永遠に結びついているのですから[6]。その果てしない広がりの中に、わたしは、捉えようのない生命の幻影を見るのです[7]。 今回は、ただの船乗りとしてではありません。危険な、鯨を狩る旅に出ると心に決めていました。わたしの想像という荒れ狂う海には、巨大な鯨たちの幻影が泳いでいました。その中心には、ひときわ大きく、まるで空に浮かぶ雪山のような、白い幻の鯨がいたのです[11]。禁じられた海を航海し、未知の岸辺に降り立ちたい[10]。この熱い思いが、捕鯨の聖地ナンタケットへとわたしを駆り立てました[12]。 凍てつくような12月の夜、たどり着いたのは「噴水亭、主ピーター・コフィン」という、どこか不吉な名前の宿屋でした[13]。店内の壁にかけられた、煤で黒ずんだ一枚の奇妙な絵に、わたしは釘付けになります。それはもう、湿っぽく、ぬかるんだ、不気味な絵で[15]、大嵐に見舞われた船が、怒り狂った鯨にマストごと串刺しにされているのです[16]。これから始まる旅の、暗く不可解な前触れのようでした。にやりと笑う宿の主人は、空いている寝台はひとつだけ、しかも銛打ちと相部屋でなければならない、と告げるのでした[19]。