
Candide
Listen as Narration

Voltaire(1694 – 1778)
1759年
Voltaire's "Candide" stands as a biting 18th-century satire, chronicling the picaresque misfortunes of its naive protagonist as he journeys through a world rife with war, injustice, and human folly. This masterpiece relentlessly lampoons the philosophical optimism prevalent in its era, exposing the absurdity of believing in "the best of all possible worlds" despite overwhelming evidence to the contrary. Its sharp wit and timeless critique of unfounded idealism continue to resonate, offering a powerful commentary on human resilience and the necessity of practical action in the face of suffering.
ウェストファリア地方にそびえる、サンダー・テン・トロンク男爵の壮麗な城。そこに、カンディードという、生まれつき心根の優しい純朴な青年が住んでいました[1]。そのお城は、門ばかりか窓まで備わった、この地方で最も力あるお方の館です[2]。カンディードは、家庭教師であるパングロス先生から、こう教わってきました。「この世界は、ありとあらゆる世界の中で最善のものである。万物は必然的に最善の目的のために作られているのだ[3]」。先生は熱っぽく語ります。鼻は眼鏡をかけるため。だからこそ眼鏡は存在するのだ、と。ある日の午後、カンディードは想いを寄せる男爵令嬢、キュネゴンド姫のそばにいました。衝立の陰、姫が落としたハンカチを拾い上げると、ふたりの指先が触れ合います。カンディードは無邪気にその手を取り、優しく口づけました。瞳は輝き、膝は震え、ふたりの唇は自然と重なります[4]。しかし、その甘美な瞬間は、男爵自身によって無残にも引き裂かれます。この罪なき戯れのせいで、カンディードの世界は粉々に砕け散りました。怒りに燃える男爵の容赦ない蹴りを臀部に受け、彼は城から叩き出されてしまったのです[5]。地上の楽園を追放され、カンディードはただ天を仰ぎ、涙ながらに、どこへ行くとも知れぬ道を歩み始めるのでした[6]。